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富山県PTA親子安全会 30周年記念講演

  • 更新日時:2010/05/10 (月) 17:40
  • 講演会
講師
エッセイスト 安藤和津 先生
開催日時
平成21年7月12日(日)15:00~16:45
開催場所
富山国際会議場 大手町フォーラム メインホール
演題
「明日を素敵に生きるには」

今日は、私の61年間に体験したこと、感じたことを中心にお話ししたいと思います。
 私の事務所は、東京・六本木のミッドタウンのすぐそばにあります。ある深夜12時ごろに、すごく若いカップルが腕を組んで買い物をしていました。
 レジは結構混んでいました。私が並んだら、真ん前にその男の子が並んでいるんです。あれ、男の子が並ぶんだ。女の子はどこ?と思ったら、すぐわきで携帯電話でメールをピピピピッとやっています。そのうち女の子が顔を上げて「てめえ、遅いんだよ」と男の子に向かって怒鳴りました。男の子が「ごめんね。レジが混んでるから、ちょっと待ってて」(笑)ですって。
 男女共同参画社会と叫ばれて久しいですが、何かが逆転してしまっているというのは、いったい何なんでしょう。ああいう若い世代が、これからの高齢化社会を迎える社会を支えていくのかと思うと、なんだか背中が薄ら寒い感じがします。政治も、私たちにとってとても大切なことですけれども、次世代をいかに育てるかが今後の課題じゃないかということをしみじみ感じた買い物の一夜でした。

 私は、昔の女の仕事というのは、「さ・し・す・せ・そ」と思って生きていた最後の世代です。裁縫の「サ」、しつけの「シ」、炊事の「ス」、洗濯の「セ」、掃除の「ソ」をやってこそ家庭の中でのお母さんと言われた時代に育った私たちにとってみたら、今のお母さんたちは楽だなと思います。なぜかというと、昔労働に費やしたエネルギーは、今、機械が全部かわりにやってくれているからです。
 私は母の在宅介護を10年近くやりました。最初、私の母にまさか介護が必要になるなんて思いもしませんでした。人間誰でもそうですけれども、自分だっていつどこで介護される身になるかわからない。自分の親をいつどこで介護するようになるかわからない。常に私たちはそういうことと向き合って生きているんだなということを、母の介護体験をもとにしみじみ感じました。
 母は実は脳腫瘍だったんですけれども、全く原因がわからなかった。

 何か変だと思ったきっかけは、母は、すべての電話番号を記憶していて片手で電話をかけるんですが、もちろん人間だから押し間違えます。そうした時、「この電話の子機、壊れてるじゃないの」と、たたきつけて壊してしまいます。
 ある時、母が検査入院しました。検査の結果をお医者様に聞いたら、「血圧と糖尿の気がちょっとありますが、いや、もう立派ですよ」と言われました。母のヒステリーはやっぱりもともとのもので、病気は関係ないんだと思っていたところ、病院に呼ばれました。そして、退院前の脳のMRIで大きな脳腫瘍ができていることが分かったのです。
 お医者様は、「この腫瘍で、よくしゃべって、よく歩いてらっしゃいますね。よっぽど気丈な方なんでしょうね」とおっしゃいました。「腫瘍ができてから30年近くたっています。手術のしようがありません。お薬も出せません」と言われたとき、私は生まれて初めて、心から神様にわびました。あれだけ憎んで早く死ねばいいと思っていた母でしたが、母ではなく病気が母をそうさせていたのだという事なのです。誰よりも母が苦しく辛かったと思います。神様に「1分1秒でも長く親孝行させてくださいと」と祈る思いでした。
 食べることはとても大切だと思います。要するに、お医者様が薬もない、手術もできないとおっしゃったとき、私は、素人の考えですけれども、血液がさらさら流れる食べ物を食べてもらえばいいんじゃないかと思いました。
 なぜかというと、うちの母、私の手づくりで、野菜を多く、油と糖分を少なくした食生活に切りかえて1か月で、目に力が戻ってきました。気がついたら、テレビのリモコン、電話の子機は壊れてません。母のヒステリーがおさまったんです。食べるものの影響ってすごいなと思いました。
 食でもう一つ話をしておかなければいけないのですが、最近の日本人は肉を食べることが多くなってきました。農耕民族で穀物を食べてきた東洋人、日本人は欧米人に比べて腸が長く出来ています。肉を腸の中に長く入れておくと「腐」るの字のごとくです。府は五臓六腑の「腑」肉が腸に長くいると腐ると書きます。東洋人は肉体の構造が欧米人とまったく違います。もともと人間は肉食かというとそうでもありません。歯の数を数えてみて下さい。穀物を噛んで砕く臼歯、野菜や果物などを噛む門歯と肉魚を噛む犬歯があります。それぞれの比率は5:2:1です。穀物:野菜果実:肉魚の比率で歯は出来ています。私たち日本人は戦前と比べると噛む回数が半分に減っています。昔は1420回、時間で22分かけて食事をしていましたが、現在は620回、時間は11分だそうです。物を噛んでちゃんとそしゃくする事がなくなってきています。今、「切れる」子どもがすごく多いのは、糖分と資質がすごく多い食事を与えていることに起因しています。「高いお金使って塾へ行かせてるのにどうして勉強ができないの」と怒る前に、お子さんにどんなおやつ、どんな食事を与えているかをもう一度考え直して下さい。
 人生、辛いことはいっぱいあります。辛い。みんな幸せになりたいのに、60年たっても幸せは来ないじゃないのと思っている方、たくさんいらっしゃると思います。でも、物は考え方です。「辛い」ことを一つ乗り越えれば「幸せ」になる。ばねと一緒です。ばねも、ぎゅっと押さえられるから、ぽんと飛びます。負のことを負としてとらえない。

 では、今日ここでやってみたいのは、富山県夫の自立度チェック。男性の方々、ご自分で常日ごろおやりになっていることを指を折って数えてみてください。伴侶がいらっしゃる方は、伴侶を思い浮かべて指を折ってみてください。いきます。
1番、「おーいお茶」と言わずに、お茶やコーヒーぐらいは自分で入れる。
2番、お米やパンなどの主食の値段を知っている。
3番、得意と言える料理が2種類以上ある。
4番、背広やシャツなどを脱ぎっ放しにしない。
5番、自分の洋服類は自分で買う。
6番、ごみの収集日を知っている。
7番、靴下の場所を知っている。
8番、大根とネギを買ってきてくれる」と言われても、嫌がらずに買いに行く。
9番、奥さんや子供や孫の誕生日を覚えている。
10蕃、仕事以外に楽しめることを持っている。
7つ以上の方は、超自立型のご主人です。4つ以下の方は、典型的な寝たきり老人、わしも族になる可能性大です。

  人生色々長くて、私が還暦を迎えた去年、昭和23年の新聞記事の切り抜きを友人が持ってきてくれました。そこの大きな見出しにあったのが、「老女クルマに撥ねられる(50歳)」。60年前は、50歳は老女でした。今そんなことを言ったら怒られますよね。人間いくつになっても日々進歩していかなければならないと思います。
これからの未来を支える子どもたちをどう育てたらいいかというのをドロシー・ローホルトという人が、詩に書いています。皇太子様がお読みになって一躍有名になりましたが、これを最後に読ませていただきます。

「子ども」 ドロシー・ローホルト
 批判ばかりされた子どもは、非難することを覚える
 殴られて大きくなった子どもは、力に頼ることを覚える
 笑いものにされた子どもは、ものを言わずにいることを覚える
 皮肉にさらされた子どもは、にぶい良心の持ち主となる
 しかし激励を受けた子どもは、自信を覚える
 寛容に出会った子どもは、忍耐を覚える
 賞賛された子どもは、評価することを覚える
 フェアプレーを経験した子どもは、公正を覚える
 友情を知る子どもは、親切を覚える
 安心を経験した子どもは、信頼を覚える
 可愛がられ抱きしめられた子どもは、世界中の愛情を感じ取ることが出来る

こういう気持ちを持って子どもに接することが出来たらどんなに素敵かと思います。
本日は、私のつたない話をお聞きいただきまして、ありがとうございました。

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